「ライツ、、アウト、、、」
3日ぶりに目を覚ました妻が発した言葉がそれだった。
休みの日は朝起きるのが多少遅い妻だが、12月の最初の日曜日、彼女は昼を過ぎても寝室から出てこなかった。
不思議に思って寝室を覗いたが彼女は寝息を立ててぐっすり眠っていた。
よほど疲れているのかと思いそのまま私は寝室を出た。
しかし彼女は日が暮れる時間帯になっても起きてくることはなかった。
17時を過ぎてさすがにもう起きたほうがいいだろうと私は寝室に入り彼女に声をかけた。
彼女は起きない。
少し声を大きくして肩をゆすった。
相変わらず静かに寝息を立ててぐっすり眠っている、ように見える。
肩を揺すったり声をかけたり、何度か繰り返したが彼女が目を覚ますことはなかった。
途方に暮れた私は内科医として大学病院に勤務している友人のウツミに助けを求めた。
電話で状況を説明するとすぐ行くよとウツミは応じてくれた。
彼の住んでいるところはここから車で30分以上はかかる。
1時間もしないうちにウツミは私達のマンションの部屋に旅行用のバックを肩にかけてやってきた。
インターホンが鳴って私がドアを開けると、少し急いだよと言いながら彼は部屋に靴を脱いで上がった。
ウツミは妻の脈をとったり呼吸を確認した後に持参した旅行に使うようなバックの中からなにかの医療器械を取り出してセットした。
それは心電図をとる器械だという。
こんな小さなもので心電図というものがとれるのかと私は驚いた。
こんなポータブルな器械があって今は本当に便利な時代だとウツミは妻の様子を注意深く観察しなから言った。
結論から言うと、、
ウツミはきりだした。
彼女は正常に寝ている状態だ。深い呼吸に不規則な寝息。心電図も問題ない。ためしにちょっと強めにつねってみたが少し反応するだけだ。
期待していた答えが得られなかった私は困ってじゃあこれからどうしたらいいんだろうとウツミに訊ねた。入院とかしたほうがいいのだろうか。
もう少し様子をみてもいいと思う。私もできる限り様子を見に来るよ。彼は言った。
次の私は仕事を休み彼女に付き添った。といっても彼女が寝ているベッドの横に置いた椅子に座り、たまに彼女が呼吸していることを確認するだけだ。
明後日の朝になっても彼女が目を覚まさなければ病院へ連れて行こう。
私は疲労した頭を少し振りながらそう心に決めた。
続く